top / index / prev / next / target / source
日記形式でつづる いがぴょんコラム ウェブページです。
盛者必衰のルールに もののあはれを感じつつ…
ふと歴史を振り返ってみました。
ほんの昔 Novell NetWareというパッケージソフトがありました。パソコンにファイル共有とプリンタ共有を提供するソフトでした。当時丁度 MS-DOS (+ Windows 3.1) 搭載パソコンを 会社などの業務で利用しだそうという機運が高まっており、ファイル共有とプリンタ共有とを提供するNetWareは爆発的に売れ、また 非常に高く評価されていました。MS-DOSにネットワークを組み込むのは利用可能なメモリ空間が限られるなどのMS-DOSの制約などもあり メモリ常駐サイズが小さいNetWareのクライアントはとても重宝されました。NetWareを使っていなかったらモグリだし NetWareの資格を持っているだけでかなり価値があるものと認識されていました。ところが その後 Microsoft Windows NTなるものが登場し、NetWareのシェアをどんどん浸食していきます。Windows NTの方がインストールや その後の操作が簡単だったという諸条件もありますし、丁度その頃 Microsoft Windows 95なるものが発売され、Windows 95 は MS-DOSの頃に比べネットワーククライアントのインストールが大幅に簡素化されていた点も見逃すことが出来ません。しかし、何よりも Windows NTはNetWareよりも初期コストが安価だった点が Windows NTシェア拡大の最大の原因だったように思えます。
一方 MS-DOSから Microsoft Windows 3.1J への移行は かなり時間がかかったように思います。まず何よりも Windows 3.1用のアプリケーションが少なかった事や インストールが厄介だったこと、Windowsの起動が (当時のパソコン的に) とても時間がかかったことなどがあります。そして 何よりも『ウィンドウ(窓)』なるもののニーズが無かったように思います。一太郎のジャストウィンドウなどのようなアプリケーション固有のウィンドウシステムで 問題なかったのです。MS-DOSに比べ Windows 3.1は メモリ利用が幾分楽ではありましたが、そんなのエンドユーザには意味のないことだったようです。しかし それは Windows 95の登場によって変わります。プログラマーの立場として、Windows 95 は それまでの MS-DOSやWindows 3.1などに比べ メモリが自由に利用できました。メモリの制約が無くなることもあってネットワーククライアントの導入は楽になっていました。ウィンドウシステムのメリットもその頃 エンドユーザに少しずつ浸透していっていました。ウィンドウがあるということだけでなく異アプリケーション間で データの受け渡しが可能な クリップボードなるものが皆に認知されだしていたということも 印象強かったです。当時のパソコンスペックが Windows 95を動かすだけの体力を持ち始めていたことも重要です。CPUもそうですが、グラフィックスカードが各種整ってきていました。あとは理由もなく Windows 95人気があったようにも思います。日本の各種メディアも一生懸命 Windows 95を宣伝していましたので Windows 95人気は益々高まるばかりでした。ハードウェアベンダーとしても Windows 95人気にあやかってハードウェアを販売できたので、みな持ちつ持たれつで喜んでいました。この例では今まで無かった価値である ウィンドウシステムやクリップボード、グラフィックカードそしてネットワークなどがキーワードとなり、さらに各種メディアによるマーケティングが功を奏した例だと思います。ちなみに Windows 3.1への対応が遅れていた 当時 デファクトスタンダードだった一太郎は Windows 95の流行の反作用で どんどんシェアを失っていきました。悲しい歴史があります。
つい最近では クライアント・サーバアプリケーションを Webブラウザベースのアプリケーションサーバが置き換える例があります。これは一気に行きましたね。クライアント1台ずつに クライアントアプリケーションをインストールしていく手間がとても面倒なのだと皆が認知し、クライアント・サーバ型アプリケーションに比べて見栄えの悪い Webブラウザベースのアプリケーションへと置き換えていった例です。これはアプリケーションそもそもの使い勝手が低下するのは我慢しても インストールの面倒さが緩和されればずっと良いということが認識されて発生した デグレード型発展という意外な例だと思います。また根底に そもそものインターネット人気もあります。インターネットでは 何やらアプリケーションをわざわざインストールしてまで何か画面につなげるなんて 普通はやりたがらない人が多く、多くの場合は Webブラウザがあればすぐに表示可能な HTMLコンテンツを好んで見る傾向があったことにも起因します。アプリケーションを作る側の立場としては、Webアプリケーションの作成は従来型クライアント・サーバ作成よりも ずっと面倒であるのに、です。とにかくこの例では お手軽さ+見栄えや操作性の低下という 不思議な条件下で 技術を置き換えていっています。
では 今後を見てみましょう。(ここからは 単なる 根拠が薄い『予言』です。)
Linuxはデスクトップで流行るのでしょうか? アプリケーションは 最近増えてきたとはいえまだまだ不足しています。ウィルス対策ソフトやメールソフトなど どれ一つとってもどれを選べばよいのかすら私には分かりません。でも 価格面では有利かも知れません。Windowsに無いものを持っているかというとそんなに画期的な新機能が Linuxデスクトップにあるとは私には思えません。(私は Linuxに強い興味は持っているのですよ) インストール面で アプリケーションの配布などの面で言うとレジストリのような 各種メンテナンスをしにくくする要因が無い分だけ たくさんの端末を管理している人には有利だとも思われます。… Linuxデスクトップの流行は 価格面というものや 多数端末のメンテナンスなどの要素で選択されない限りちょっと難しいですね。
Linuxサーバはどうでしょうか? データベースやアプリケーションサーバなどはずいぶんと増えてきました。また元々 インターネット系のサーバアプリケーションは Windowに先んじて かなり充実しています。しかし管理面ということで Windowsに慣れている人が Linuxをすぐ使えるとは とても思えません。Linux用Webベースの管理画面が少しずつ登場してきているとはいえ、やはり厄介です。UNIXユーザはLinuxへの移行はすごくすんなり起こっているようですけれども。これは単なる価格面での移行と見えます。でも WindowsからLinuxへの移行は 操作面で 並大抵ではありません。これは 価格面で選択され無い限り Windows から Linuxへの移行は発生しにくいことでしょう。逆に 不況下ということで、コストがとても重要視されるようでしたら、サーバの WindowsからLinuxへの移行は一気に起こりえるとも思えます。丁度 Windows 2000 ServerからWindows Server 2003への端境期ですので、コストに敏感な方々は Linuxへの移行を十分に検討する時期になってきていることでしょう。
Flashクライアントはどうでしょうか? 私は そもそも HTMLベースの 貧弱Webクライアントというのは皆 それまでの VBなどのリッチクライアントから 割り切って 我慢して移行してきたのだと思っています。リッチなクライアントの方が良いに決まっているのです。しかし非Webには ほとんどだれも戻りたがらないでしょう。FlashベースのリッチWebクライアントはとても流行すると 私は踏んでいます。FlashベースのリッチWebクライアントは Webクライアントという作法に則った上で とても操作性が良いものを作ることができるのですもの。一方で ActiveXという技術そのものは セキュリティの観点から 敬遠される方向にあるとも思えます。ほんの幾つかのActiveXのみがユーザに許容されてインストールされることになるでしょう。
と徒然に所見を書いてみました。さて どうなることやら。それは歴史が証明していくことでしょう。
読者のわらやさんのツッコミ Subject: [igapyon:01154] 感想: 6/27 日記 新しい技術というものが従来の技術を置き換える条件 わらやです。感想というか、おもったことを。 94年から98年にかけてNetWare,Windows3.1/NT,ついでにJavaのインストラクタでご飯をいただいていたのですが、現在のMSの隆盛はやはり MSのマーケティングのすごさ
と思わざるを得ません。
NetWare(3.12J)はサーバとしてよくできたソフトウェアでした。現在でも部門のファイルサーバとして使うには十分実用に足りるサーバソフトだと思います。いがぴょんさんも指摘しているとおりNetWareクライアントはDOSでもWin3.1でも十分使える軽いソフトでした。MSのLANManagerクライアント(NTのクライアント)といったらメモリをとてもたくさん食べてくれて、特にWin3.1で使おうと思ったらかなり高度な(泥臭い?)テクニックを駆使しないと不安定でたいへんでした。
でも、最終的にNetWareはシェアを失ってしまいました。理由はマーケティングの差であろうと私は思います。
今はサーバ機というのがあたりまえなのですが、当時はまだサーバ機というのが認知されているとはいいがたい状況でした。当時SEがこぼしていたのですが、提案をお客さんに持っていくと (レイアウト図をさして)この端のほうにある高価なマシンは何だ?いらなんじゃないの?
と叱られ、いくら説明してもなかなか理解してもらえない、ということがよくあったようです。確かにわかりませんよね、普通。私だって妻にサーバというものを説明してわかってもらえる自信がありません。
これがNTだと「いや、これはクライアントとしても使えるんですよ。」なんていうと理解してもらえたりするのです。インタフェースが同じなので。
また、Novellという会社は情報をあまり出さない会社で、参考書籍が本屋ではほとんど入手できませんでした。特に初期のころは。だからNetWareを勉強するには教育コースを受講するしかなかったのです。資格取得も受講が義務でしたし。これにはメリットもあるのですが、競争相手が出てきた場合、マイナスに働きます。
対してMSは傍目にもうまかったです。当時は今ほどMS一人勝ちといった状況でなかったと思いますが、宣伝をバンバン打ち、ドメインをNTディレクトリサービスと言い換えたり、ペーパーウェアも出したり(アクティブディレクトリなんて96年ころから話としてはありました。NW4がだめだったのはそれも一因です。まあ、市場がまだディレクトリサービスを必要とするところまでいってなかったのが主因ですけれど)、NetWareからシェアを奪っていきました。ただNTが最初からよかったわけではありません。実用という意味ではNT3.51からでしょう。
で、今後ですが
Linuxデスクトップはおそらくだめだと思います。MSのPCでの優位性は揺るがないと思います。ただ、セットトップボックス、PDAといった分野で今以上に進出すると思います。PCという形態そのものがマイナーなものになっていくのではないでしょうか。
Linuxサーバは部門サーバとしてかなりのシェアを持つと思います。ファイルサーバだと(クライアントがWindowsなら)Windowsだと思いますが。。
Flashはよくわかりません。
長くなってしまいました。ではでは。
結城浩さんのツッコミ Subject: [igapyon:01155] Re: 感想: 6/27日記 新しい技術というものが従来の技術を置き換える条件結城です。いがぴょんさんの「振り返り」を読んで、私が感じたこと。
あるプラットホームやあるアプリケーションにべったり依存した仕事をしてしまうと、ある時期はよいかもしれないが、時代が過ぎ去ると取り残されてしまうだろうな、と思います。
結城がプログラミング言語が好きなのは、アプリケーションに比べて寿命が長い(ことが多い)からです。永遠ではないにせよ。以上、つれづれなるままに。 ----結城浩 http://www.hyuki.com/http://www.textfile.org/ In the beginning God created the heaven and the earth. (Genesis 1:1)
渡辺義則さんのツッコミ Subject: [igapyon:01159] 2003/06/27 日記 : 新しい技術というものが従来の技術を置き換える条件の感想渡辺Aです。最近、Webアプリを作るようになったのですが、どうも私は好きになれません。なぜみんなこんなのをよろんで使っているのだろうと不思議だったんですが、やっぱりこれってデグレードですよね。ちょっと安心しました。(^^;ちょうど、他にいい仕組みができないかなぁ~と考えていたところなのです。では ----渡辺義則
以前仕事で一緒だった ふじもとひできさんからツッコミ Subject: 新しい技術が従来の技術を置き換える条件とは?について考察藤本です ご無沙汰しています。お忙しいようで、なりよりです。執筆の方も順調に遅延しているようで... :-)>しかし管理面ということで Windowsに慣れている人が Linuxをすぐ使えるとはとても思えません。Linux用Webベースの管理画面が少しずつ登場してきているとはいえ、やはり厄介です。UNIXユーザはLinuxへの移行はすごくすんなり起こっているようですけれども。これは単なる価格面での移行と見えます。でも WindowsからLinuxへの移行は 操作面で 並大抵ではありません。これは 価格面で選択され無い限りWindowsから Linuxへの移行は発生しにくいことでしょう。これはどうでしょうか? 確かに「PCサーバ」として見た場合は、価格面での優位性しか無いように思えます。しかし、最近、NAS(OSとしてLinuxを採用しているものが多いです)が流行り出している状況を見ますと、ファイルサーバの操作性という部分でも、かなりLinuxも健闘しているのではないでしょうか。もちろん、ユーザからは、「Linux」の存在は隠蔽されてはいますが、、、。それにもう少し頑張れば、Ghostscriptなどを使って、安価なUSBプリンターをプリントサーバーにする専用機なども出てくるかも知れません。問題の切り分けも容易にできますし、余計な事を考えなくていい分、汎用より専用の方が優れているのでは、と思っています。
私の予言としては、「PCサーバで提供されている機能は、かなりの部分専用機に移行していくであろう! そして、専用機にはLinuxが搭載されるであろう!」です。 Flashに関しては、まったくの同意見です。機会がありましたら、ご教授ください。